この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
被相続人である依頼者Cさんの父親は35年前に亡くなっていました。Cさんは農家の長男だったので農地については生前に贈与を受けていました。ただ,なぜか自宅の土地・建物の名義はお父様のままでした。Cさんは自分が高齢になったので,自宅の土地・建物についてもきっちりしておきたいと考えて他の相続人と遺産分割の話を始めました。しかし,他の相続人は他家に嫁いだ姉妹であり,あまり付き合いはありませんでした。遺産分割協議が上手く進まなかったので,Cさんは当事務所に相談に来られました。
他の相続人との協議が難航していたので,当事務所で代理して遺産分割調停を申し立てることにしました。ところで,Cさんは,広大な農地の生前贈与を受けていたので,遺産分割に際してはそのことを考慮しなければならないのが原則です。つまり,生前贈与を受けた分を遺産の先取りとして考えなければならないのです。ただ,Cさんは,生前贈与を受けるまで被相続人である父親の農業に無償で従事していました。農地の生前贈与もその見返りとして受け取ったという意味合いが強かったようです。Cさんが被相続人の財産の維持又は増加に貢献した場合には,その分を寄与分として主張できることがあります。本件でも寄与分の主張を検討しましたが,被相続人が亡くなられたのが大分前のことだったので寄与分の主張をすることは難しい状態でした。その当時は,寄与分の規定は存在しなかったからです。また,生前贈与の額が大きかったので,仮に寄与分を主張しても焼け石に水ということにもなりかねませんでした。当事務所で諸々検討した結果,生前贈与で譲り受けた農地は,被相続人が依頼者の貢献に報いるために贈与したものだから,遺産分割の割合を決めるに際して考慮する必要がないと主張することにしました。結局,他の相続人もこのことを一部認めてくれたため,Cさんに有利に遺産分割調停をまとめることができました(実質的に相応の寄与分を認めたのと同視できるような結果になりました)。
当事務所は,迅速・丁寧な調査をすることをモットーとしています。このケースでも,考えられる法的主張を複数検討して,先例を調査して遺産分割調停に臨みました。難しいケースでも調査をすることで突破口が見えてくることがあります。まずはお気軽にご相談くださることをお勧めします。