この事例の依頼主
50代
相談前の状況
相談者の兄が死亡し相続が開始したところ、兄は生前、会社経営をしていたことから、かなりの負債が存在する可能性が強く、また、ビジネス上のトラブルによる損害賠償を請求される危険もありました。そこで、相談者をはじめ、相談者の親も亡くなった兄の子も、これで終わりにしたいと望んでおられましたので、相続放棄をお勧めしました。ただし、全員いちどきに放棄できるものではなく、相続順位に従って放棄していくことが必要であるということを教示しました。具体的には、まず第1順位の子が相続を放棄をし、次に第2順位の尊属である親が放棄をし、最後に第3順位の兄弟姉妹である相談者が放棄をするということです。その際、「子」の場合は、他に相続人が存在するかどうかを気にせずに放棄できますが、第2順位の「尊属」である親の場合は、先順位である「子」が存在しないことが判明してはじめて相続人となり、相続放棄ができるようになるので、相続放棄をした子以外には、他に子が存在しないことを明らかにしなければなりません。そして、親が放棄した後、第3順位の「兄弟姉妹」である相談者が放棄をするためには、自分よりも先順位の「尊属」が放棄をした親の他には存在しないことを明らかにしなければならないということを、説明したのです。
解決への流れ
相続順位に従い、順次に放棄していく手続が煩雑であり、とくに本件では、死亡地が判然としなかったなどの事情があったので、すべて当事務所が手続を代行し、短期間ですべての相続放棄を完了しました。
相続により負債を引き受けさせられる危険がある場合、相続放棄の他にも、限定承認といって、承継するプラスの財産の範囲でマイナス負債を負うという制度もあります。しかし、限定承認は共同相続員全員で行わなければならないので、相続人の足並みが揃わなければなりません。一方、相続の放棄は単独でも可能です。したがって、相続人各位が、自己の置かれている状況を正確に把握したうえで、適切な方法を選んでください。なお、限定承認も相続放棄も、相続開始を知ってから原則として3か月以内に手続をしなければなりませんので、遅滞なく決断し行動してください。