この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
5人兄弟で、父が亡くなりましたが、父が、亡くなる約3年前に、父と同居していた兄弟の1人に対し遺産のほとんどを取得させるという内容の公正証書遺言を作成し、また、この遺言書の作成よりも少し前に、その兄弟に対し、自宅の生前贈与を行い、不動産の登記も移していたことが判明しました。
解決への流れ
他の兄弟姉妹ともに、父と同居していた兄弟に対する生前贈与及び遺言について、内容証明郵便で、遺留分減殺の意思表示を行うとともに、家庭裁判所に対し調停の申立を行いました。その際、自宅不動産の生前贈与は1年以上前になされたものであっても、特別受益や遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与に該当することを主張しました。その結果、相手方は上記の点を争うことなく、家庭裁判所の調停で、この自宅不動産を売却することで合意し、売却代金から遺留分全額の支払を受けることができました。
遺留分算定の基礎となる財産の範囲は、①被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に②その贈与した財産の価額を加えた額から③債務の全額を控除した額とされており、このうち②贈与については相続開始前の1年間に行ったものに限られていますが、特別受益や遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与に該当する場合には、期間制限はありませんでした。もっとも、令和元年7月1日施行の改正民法では、相続人の場合には10年間という限定がついた(他方、相続人以外の場合には従前どおり1年間)ため、注意が必要です。