この事例の依頼主
男性
相談前の状況
父が他界し、私が相続人になりました。ただ、独立して実家を出て以降、父とは疎遠であまり関わりを持ってはいませんでした。そのため私は父の遺産がどのような状況であるか全くわかりませんでした。遺品整理のため、父が住んでいた家に行ってみると、ポストに郵便物が詰め込まれており、中身を見てみると借金の督促の手紙でした。どうやらいろいろな業者からお金を借りていた様子で、百万円単位の借金を抱えて亡くなったようでした。一方で、父の通帳にはほとんどお金は入っておらず、とても借金を返せるような財産は持っていませんでした。私自身も自分と家族の生活で手一杯で、父の遺した借金まで支払うことは絶対にできません。相続放棄という制度があることは知っていましたが、どうしたらよいかわからず、弁護士に相談することにしました。
解決への流れ
父の家で見つかった資料を見せ、私の置かれた状況を説明しました。まずは父の借金が時効にかかっている可能性がないか等という観点で確認してもらいましたが、時効にかかっていない借金だけでも百万円以上となるであろうことがわかりました。結論として、やはり相続放棄をするのが妥当であり、相続開始を知ってから3か月以内に手続きをしなければならないことなどを説明されました。手続きに不慣れで、各所から必要書類を集める手間もかかることを考えると、自分自身の仕事や家族との時間とバランスをとってスムーズに放棄の手続きを進めることは難しいと判断し、弁護士に依頼することにしました。
亡くなられた方の債務が大きく、遺された資産での返済の目途が立たない場合には、基本的に相続放棄が推奨されます。相続放棄により、遺産はプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ必要がなくなります。ただし、相続放棄には相続開始を知ってから3か月の期限があり、この点は注意が必要です。仮に、亡くなられた方の財産状況がわからず、調査に時間を要するとしても、熟慮期間伸長を申立てて、3か月の期限を伸ばしてもらう必要があります。期限を過ぎてからの相続放棄も、事情次第では可能性が全くないわけではございませんが、コスト面から見てもリスク面から見ても絶対に避けた方がよいことであることに間違いはありません。また、ご依頼者様によっては、ご自身で相続放棄の手続きをされる方もいらっしゃいます。他の裁判手続と同様に、ご自身に関わる手続きを自ら行うことは可能です。一方で、本件のご依頼者様のように、費用をかけてでも弁護士に依頼したいとおっしゃる方も多くいらっしゃいます。最終的には、それぞれのご相談者様の状況に応じて、自分で手続きをする手間暇やそのために費やされる時間・自分自身の生活とのバランス・弁護士に依頼する安心感・弁護士に依頼するコストなどの様々な事情を考え、お決めいただくことになります。