犯罪・刑事事件の解決事例
#人身事故 . #慰謝料・損害賠償 . #過失割合 . #後遺障害等級認定

【遷延性意識障害】【訴訟】【高額な介護費】【過失相殺を否定】1級1号の認定を受けた被害者につき、職業介護人の介護費として月額58万円、近親者の介護費として週5日8000円、週2日1万円が認められた事案

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藤本 一郎 弁護士が解決
所属事務所だいち法律事務所
所在地大阪府 大阪市北区

この事例の依頼主

20代 女性

相談前の状況

被害者は、自転車に乗り、青信号に従って、自転車横断帯が併設されている横断歩道上を走行し、道路を横断しようとしていました。この時、青信号に従って左折してきた自動車に衝突されました。この事故によって、被害者は、左急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折などの重大な傷害を負い、「遷延性意識障害」などの重篤な後遺障害が残ったため、常に介護が必要な状態になってしまいました。依頼を受けた後に自賠責保険の請求手続を行った結果、別表第一第1級1号と認定されました。

解決への流れ

重症事案だったので、最終的な解決の方法は、裁判を選択しました。提訴前に人身傷害保険を請求するか否かを検討しました。本件では、過失割合が主要な争点の1つになると見込まれましたが、被害者の過失が軽微だと考えられました。この場合に、人身傷害保険の請求を先行させると、全体的な受領額が少なくなって、被害者に不利益が生じる可能性が高いと考えられました。そこで、提訴前に人身傷害保険を請求しないことにしました。訴訟における主な争点は以下のとおりでした。1 過失割合被告は、被害者にも10%の過失があると主張してきました。これに対し、こちらは、加害者の一方的な過失によって事故が発生したのであり、被害者には落ち度がないと主張しました。裁判所は、先行車両の通過後、加害車両との間隙を縫って交差点を横断しようとした被害者にも10%の過失相殺をすることが相当であるが、被害者は、自転車横断帯を走行していたと同視でき、加害者は横断歩道及び自転車横断帯の手前で一時停止していないから、被害者に有利に10%の修正を行い、最終的な過失割合を被害者0:加害者100と認定しました。2 付添看護費の額入院期間中、被害者は、常に介護が必要でした。また、意識状態の改善を図るため、積極的に刺激を与える必要がありました。事故当時、両親は就労していましたが、被害者が重篤な状態となったため、母が退職して付添看護に当たりました。また、父も、仕事後や休日に、付添看護を分担していました。一般的な基準では、付添看護費の額は、6000円前後と認定されるのが通常であり、高くても8000円にとどまる例が多いです。これに対し、本件では、裁判所は、退職した母の年収を基礎として、1日あたりの付添看護費を1万0289円と認定しました。3 将来介護費被害者は、遷延性意識障害などの重篤な後遺障害を負ったため、日常生活のあらゆることに、24時間態勢で介護が必要でした。近親者だけで全ての介護を担うことは不可能であり、日中は、介護施設に通ったり、訪問介護サービスを利用するなど、介護の負担を軽減するための介護スケジュールを組みました。介護サービスを利用することを前提に、十分な金額の将来介護費を認定すべきと主張しました。また、介護サービス費用の水準について、将来的に低額化する可能性はなく、むしろ高額化する可能性があるから、少なくとも現状が維持されることを前提として介護費の額を認定すべきと強く主張しました。この結果、裁判所は、職業介護人の介護費   月額58万円(月22日換算で1日あたり約2万6000円)近親者の介護費     週5日8000円/週2日1万円という高額な費用を認めてくれました。4 近親者固有の慰謝料民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と定めています。この規定を前提として、被告は、民法711条に兄弟は規定されていないから、慰謝料は認められないという主張をしました。これに対し、兄弟が精神的苦痛を負わないことは考えらないと主張するとともに、兄弟の尋問を実施し、事故による精神的苦痛、生活の変化による苦しみ、将来も被害者の介護に関わっていく覚悟などを明らかにしてもらいました。この結果、兄姉にも各200万円の慰謝料か認められました。なお、両親に対しては各400万円の慰謝料が認められています。

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藤本 一郎 弁護士からのコメント

本判決の特徴の1つは、かなり高額の付添看護費・将来介護費が認められている点だと思います。高額な付添看護費・将来介護費を認定をしてもらうため、ご家族から、①事故後の経過、被害者の現状などの聴き取り②入手したカルテの精査③主治医に面談した上で、被害者の状態、介護で注意すべきポイントの聞き取りなどを行って、・日常生活の全般について介護が必要であること・24時間態勢の介護が必要であること・介護の負担がとても重いこと・介護サービスを利用する必要があることなどについて、詳細な主張立証を行いました。介護に関する医学文献、将来的な介護費の変動に関する論文などを多く提出して、介護内容や態勢が、この被害者に特別なのではなく、重篤な後遺障害であれば一般的に必要とされていること立証しました。また、兄姉の慰謝料については、条文に記載されていないから認められないという流れがあることに疑問を感じていました。そこで、最終的には、ご兄弟にも尋問に応じていただき、直接、気持ちや将来の介護に関する考えを述べてもらいました。これらの対応の結果、裁判所が、十分な内容の判決を出してくれたのだと思います。解決に至るまでに長い期間がかかりましたが、納得のできる解決を得ることができたと思います。近親者は、大変な思いで介護を続けながら、裁判のために資料の収集や状況の説明などに協力していただくなど、多大な努力を続けてこられました。被害者に対する愛情を持ち続け、より良い結果を得るために頑張った結果、よい解決を勝ち取ることができたのだと思います。詳しくはこちらのページをご確認ください。https://daichi-lo.com/case/case-senen1.html