この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
ご依頼者は、お亡くなりになったお父様の遺言により、その遺産を全て取得されました。ところがお父様の後妻の方から遺留分減殺の請求をするという通知が来たとのご相談でした。
解決への流れ
調査すると後妻の方はお父様の生命保険(死亡保険金)を取得していることと、一部の財産を取得していることが判明しました。晩年の夫婦関係とお父様の気持ちを知るご依頼者は、お父様の気持ちを尊重なさりたいとの強い思いをお持ちでした。ただ、遺留分は法律上当然の権利ですし、なかなか減額させることは容易ではありません。そのうち相手方から調停が申し立てられ、その後訴訟が提起されました。死亡保険金が特別受益に当たるかどうかは昔から議論されているテーマですが、原則的には否定されるという最高裁の判例がでています。ですから、遺産分割の場合でも死亡保険金を特別受益とすることは原則としてできませんし、遺留分減殺請求の場合の特別受益については公刊された先例も見当たらないため、これを担当裁判官に理解してもらうことはハードルが高いのが現状です。書面で、事実の経過と理論的な問題を重ねて主張し、担当裁判官を説得することができ、遺留分額を数百万円分減額させる和解を成立させることができました。
判例は、具体的な事実関係を前提にして積み重ねられているものです。当面の問題については、事実関係の詳細において当該判例と共通する部分と異なる部分とを明確にした上で当該判例の射程距離を考えることが重要です。そうすることによって、一見無理のように思える主張でも、裁判所に理解してもらえる部分が見えてくることになります。ご依頼者の思いをどういう形で反映させることができるかということを十分検討することが良い作戦を導く基本になると思います。