この事例の依頼主
60代 男性
ご依頼者様は、母親が亡くなった後、姉が自分には内緒で、母親が亡くなる直前に母親の遺産を全て自分が相続するという内容の公正証書を作らせていたことを知りました。ご依頼者様は、ご依頼者様の母親が生前、姉に資金援助をしてきていたので、自分に多めに遺産を渡したいとまで言っていたことから、姉の行いにとても失望していました。
私は、まず、ご依頼者様に公正証書の無効を主張できるような事情やそれを裏付ける証拠はないかを尋ねました。母親は、少し物忘れはあったが、亡くなる直前までしっかり話ができる状態であり、特に認知症であるという診断を受けたこともないとのことでした。私は、公正証書が作成された当時の状況を知るすべもないこともあり、無効を争うのは難しいと考え、遺留分減殺請求を行うことにしました。そこで、遺留分減殺請求の調停を申し立て、遺産であった預金、自宅、また保管していたはずの400万円の現金、姉に生前贈与していた200万円ほどのお金が遺産であるとして、その4分の1を請求しました。調停では、さまざまな不動産屋さんに頼み、最も高い金額を出した不動産屋の自宅の査定書(ほかの不動産屋より500万円ほど高い)を提出し、確かにあったはずの現金については、陳述書や銀行の取引履歴等により証明するようにしました。姉の生前贈与については、姉自身が否定し、証拠もないため、これを証明することはできませんでした。そこで、調停委員や姉の代理人弁護士に、公正証書が勝手に作成された経緯やご依頼者様の現在の経済的事情、姉は遺留分減殺請求されても大部分を得られることなどさまざまな話を行い、上乗せで少しでも金額を増やすように交渉しました。その結果、自宅の査定額2500万円、預貯金1200万円、現金400万円の合わせて4100万円の遺産であり、遺留分としては1025万円しかなかったのですが、解決金として1250万円を獲得することができました。
示談交渉であろうが、調停であろうが、訴訟であろうが、最後は交渉になります。そこで、いかに相手から少しでも多くの解決金を引き出せるかについて非常に苦心しました。証拠がなくても、最後は、遺留分を超える金額の解決金を得ることができました。それは、相手方の事情を理解しながらも、ご依頼者様の気持ちや実情を訴えかけ、時にはかたくな態度を取り、時には優しい態度になるなどして、相手を納得させること、もうここで決めないといけないという気持ちにさせることができたからだと思います。交渉は、弁護士の腕の見せ所です。遺留分以上の金額を獲得でき、ご依頼者様も喜んでくれ、とても嬉しかったです。